傷跡の治療では、傷の形状、何が不都合なのか、その状態になるまでの経過、術式や治療結果へのご理解など、様々な要素をふまえてより良い結果を探していきます。
傷跡は正常皮膚とは見た目が違うように、性状も皮膚とは異なります。簡単に言えば傷が治る際に一部結合組織に置き換わったもので、これを瘢痕(ハンコン)と呼びます。瘢痕は大きく3つの種類に分類されます。
傷跡の種類
傷跡は正常皮膚とは見た目が違うように、性状も皮膚とは異なります。簡単に言えば傷が治る際に一部結合組織に置き換わったもので、これを瘢痕(ハンコン)と呼びます。瘢痕は大きく3つの種類に分類されます。
成熟瘢痕
ほとんどの傷跡はこの成熟瘢痕です。傷が落ち着くまでに6ヶ月はかかるとされています。この間に最初は赤く硬さもあった傷跡が、肌色や白く抜けたようになり、硬さもほとんどなくなったものです。通常見た目だけの問題なため、治療する場合は自費診療になります。
肥厚性瘢痕
傷跡が盛り上がってしまったものです。深い傷や、傷が治るのに時間がかかる、長い時間炎症にさらされている場合などで、結合組織が過剰に出現し盛り上がってきます。関節付近のような、よく動くところ、引っ張られるところなどは好発部位です。年単位で落ち着きますが、目立つ傷跡となることが多いです。
手術は痛みや皮膚の動きに支障がある場合のみ保険での治療対象ですが、見た目の改善の場合は自費診療となります。
ケロイド
外見は肥厚性瘢痕に似ているのですが、大きな違いは傷を越えて正常皮膚まで病変が拡がることです。痛痒い赤いミミズ腫れのうように見られることが多く、アレルギー反応の一つと考えられていますが、はっきりとした原因はよくわかっていません。程度も様々で、比較的小さなケロイドで終わるものや、年々進行していく真性ケロイドなどあります。好発部位が知られていて、耳、胸、肩、恥骨部などがあげられます。また頭皮、陰部では出現しにくいなど、同じケロイド体質の方でも、場所によってケロイドのできやすさが違ったりします。
ケロイドは完治の期待できないことが多いのですが、症状の軽減は可能です。保存的な治療を続けつつ、形成外科では必要に応じて切除も行います。
治療方法
手術しない方法
飲み薬
トラニラスト(リザベン®)が有効であるとされています。これは抗アレルギー剤であり、肥厚性瘢痕やケロイドの組織中にある各種炎症細胞が出す化学伝達物質を抑制することにより、痒みをはじめとする自覚症状を抑え、さらには病変自体を沈静化させると考えられているものです。
塗り薬
炎症を抑える目的での、ステロイド軟膏や非ステロイド系抗炎症剤、ヘパリン類用物質であるヒルドイドソフト軟膏®などです。軽度な肥厚性瘢痕に使いますが、ケロイドは塗り薬だけで治療することは難しいのが現状です。
貼り薬
ステロイドのテープ(ドレニゾンテープ®やエクラープラスター®)が用いられます。特にエクラープラスター®の効果は高く、皮膚が厚い大人には大変有効です。皮膚の薄い小児や高齢者にはドレニゾン®テープでも十分な効果が得られます。かぶれを生じなければ長く使用することで肥厚性瘢痕やケロイドの盛り上がりが改善します。また、注射治療では硬い瘢痕内に薬を行き渡らせる必要がありますが、痛みや入り方にムラが出ることがあり、まずは貼り薬で柔らかくしていくことで、無理なく注射ができるようにしていくことがあります。
安静・圧迫・固定
肥厚性瘢痕やケロイドは、日常動作で皮膚が引っ張られる部位にできて悪化する傾向が強いので、キズあとと周囲の皮膚を固定してしまう方法が有効です。医療用の紙テープ(サージカルテープ)やシリコーンテープで減張していきます。シーネに固定も有効ですが、これらは傷が治った直後から予防的に使うか、他の治療法と組み合わせて行うべき治療の1つです。
ステロイドの局所注射
ステロイド(ケナコルト®)を瘢痕に直接注射することがあります。痛みや痒みは速やかに軽減し、赤みや盛り上がりも徐々に改善していきます。ただ効果が強すぎると周囲の皮膚が薄くなって赤みが増したり、柔らかく凹んだ皮膚になることもありますので注意が必要です。また硬い瘢痕の中への注射は痛みが出たり、周りの正常皮膚に染み出すとかえって傷跡が目立ったりしますので、効果的な注射には熟練した技術が必要です。
レーザー
ケロイドの治療には瘢痕内の血管を減らす目的で、レーザー照射が有効なことがあります。代表的なものはNd:YAGレーザーがあります。
フラクショナルレーザー(当院では現在行っていません)が使用できる場合があります。皮膚に細かい穴をあけて、皮膚の再生を促すことで傷をぼかしていきます。少しでも目立たなくなるのなら程度で臨むといいかもしれません。
手術による方法
縫合法
不必要な部分を切除し、縫合していきます。縫い合わせる部分にはなるべく張力がかからないように、糸の掛け方を工夫することで、手術直後は盛り上がった傷に仕上げていきます。これは「減張縫合」という縫い方で、3ヶ月も経つと平らな傷跡となります。
どのような傷の向きにするかはある程度自由度があります。シンプルがいいのか、服に隠れるようにした傷跡にするか、後々言い訳のできる傷跡がいいのか、ぼかし効果や皮膚の延長効果を狙うのか・・・、傷の在り方が決まれば、単純縫合、Z形成術、W形成術、皮弁形成術などをその状況下で使い分けていきます。
ケロイドの治療
不要な皮膚を切り取ることで、大きく皮膚が足りない場合は植皮が選択されます。必ずしも全範囲ではなく、無理なく縫い寄せたうえで、植皮範囲を必要最小限にしていきます。
足の付け根から皮膚を採取し、適切に加工したのち目的部位を覆っていきます。足の付け根は縫い縮めますので、歩行などの日常の生活は問題ありませんが、植皮部は最初の1週間は厳重な安静が必要となります。
ケロイドの治療
ケロイドは完治の期待できないことが多いのですが、症状の軽減は可能です。まずは飲み薬、貼り薬、局所注射などで、局所的なアレルギー反応を抑えるような治療を行っていきます。
手術は瘢痕を切り取り縫うのですが、新たな傷を増やすと、そこを基にしたケロイド形成が考えられますので、極力ケロイドの中で縫合がなされるように腫瘍内切除を行い、また減張縫合を多分に施すことで、再発を抑制していきます。さらに内服や外用治療を同時に進めることで、傷が拡大しないようにしていきます。必要に応じて放射線療法を併用することもありますが、こちらは基幹病院に紹介となります。
また、一つの疾患に対し同じ時期に保険診療と自費診療を組み合わせる、いわゆる混合診療は禁止されています。そのため、自費診療に対しては自費で完結しなければいけません。院内処方、経過観察や抜糸など、通常の処置に関しては最初の治療費に全て含ませ、追加費用はかかりませんのでご安心ください。
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治療中に2院を行き来することも可能です。
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