怪我や熱傷は初期治療では、整容面まではあまり考えません。もちろん最低限の配慮はされているのでしょうが、いわゆるキレイな傷というのは、炎症、汚染、組織の挫滅などがなく血流が十分保たれた中でできるのであって、あまり最初から細い糸で細かく縫ったり、皮弁術といった凝ったことをしても報われません。そのため、十分な時間が経ち、傷として落ち着いた時に、傷跡修正をすることが望ましいです。
もし刃物で負った傷であれば、努力が報われる可能性はまだあるかもしれません。しかし、これも血流という観点から、一度傷が落ち着いた時に修正する方がベストな傷跡になります。
ケガの傷跡
怪我をすることで、後々目立つような傷跡になることがありますが、根本的な改善策としては切除が選択されるケースが多いです。そして、あくまでも切除のみでなんとかするのではなく、テープ固定などの創部安静、日焼けをしない、肥厚性瘢痕を抑える内服薬の併用など術後療法が大事になってきます。
怪我による傷跡の修正は、傷跡をなくすわけではありませんし、現在のところなくすような治療はありません。あくまでも傷を目立たなくするのです。そしてその治療法には、ある程度のセオリーがあります。
よくある症状 | 基本的な治療の考え | |
Case 1 | 傷がシワに直行する向きで、不自然なシワになる | → シワに並行になるような線に |
Case 2 | 丸みのある部分に平らでまっすぐな傷がある | → Z形成術やW形成術で丸みを再現する |
Case 3 | 鼻下にできた傷跡で目立つ | → 小鼻の付け根などに傷が一致するように縫う |
Case 4 | 皮膚に拘縮(つっぱり)がある | → 皮弁形成術で皮膚の距離を稼ぐような縫い方をする |
Case 5 | めくれかけた皮膚が治ったら、膨らんだ状態に | → ボリュームを減らしてから縫合 |
Case 6 | 擦りむいた傷が青く色づいている | → 外傷性刺青にレーザーを照射して消していく |
線状の傷跡修正に共通することは、傷の向きや位置を変えることで、目立たなくしているのです。以下にCase1~6について具体的な修正例と治療効果を書いています。
Case 1
おでこにできた縦の傷跡です。
ジグザグなW形成術を行い、一辺がシワに沿うようにしていきます。
本来のシワの見え方を損なわずにすみ、光の加減で、連続した長い一本の傷ではなく、小さい離れた傷に見え、他人の目がいかなくなります。
Case 2
唇の境目を縦に通るような傷で、そこだけ平らになり不自然な傷跡です。
瘢痕を綺麗に除去した上で、口唇の境界線がずれないように縫い合わせ、赤唇部にZ形成術を行い自然なボリュームのある丸みを作ります。さらに境界部分に小さくジグザグを入れることで、唇を縁取るように盛り上がっているバーミリオンボーダーと呼ばれるにある高まりを損なわないようにします。
くびれた部分を改善して、全体に立体的なボリュームを持たせ、本来の形に近づけます。
Case 3
鼻下に擦過傷を負い、そのまま未治療で治し傷跡を残した場合です。
もし鼻のすぐ近くの傷であれば、見た目の左右差が出ないレベルで主だった傷跡を切除縫合します。
縫合線を鼻のキワに一致させることができれば、傷跡はほとんどわからなくなります。
Case 4
膝裏周囲に負ったやけどで、傷跡や皮膚がつっぱることで、膝が伸ばしにくい瘢痕拘縮という状態です。
明らかに硬い瘢痕は切除します。膝を伸ばしたときに縦方向に皮膚が足りないようなら、Z形成術を加え皮膚の距離をかせぎます。これは延長効果と呼ばれるZ形成術の三大特徴の一つですが、実は一方で皮膚を横方向に縫い縮めることになります。そのため足や手のような細い場所では大きく1箇所のZを置くことはできませんので、小さく数カ所に連続したZを入れていきます。
横方向の皮膚の短縮は最小限に、でも延長効果は十分得られるテクニックです。このケースでは皮膚が伸びた状態で傷が癒るのを待ちますので、しばらくシーネをあてる必要があります。
Case 5
顔面から転んで、眉間の皮膚がめくれるような傷を負った。縫合したがその後この部分が膨らんだ状態で治癒している傷跡です。
斜めに傷が入り、皮膚・皮下組織がめくれた状態で、弁状創と呼ばれています。めくれた組織に血流が保たれていれば、縫うことで傷としては治ります。しかし、その過程で傷面が縮むことでこの弁状の傷が盛り上がってくるのです。トラップドア変形という現象で、形成外科ではよく遭遇する症状です。膨らみも問題ですが、その周りの平な部分との境にできる線状の溝のような傷跡も外見の悪さを助長しています。
過剰な組織を取り除き縫い合わせます。その際、Z形成術、W形成術などを小さく施し、減張縫合やぼかし効果を使って綺麗な傷に仕上げていきます。
Case 6
道路で転んで膝を擦りむいて、そのままにしていたら青黒い色味が残り不自然な傷跡となってしまった。典型的な外傷性刺青で、ほこりレベルの小さな砂や石が皮膚に取り残されている状態です。まずは色素レーザーを当てることで、色を薄めていきます。通常3ヶ月ごとに数回行うことで目立たなくさせていきます。
やけど跡
やけど跡は、色味の問題程度から、柔軟性に乏しい皮膚や、ケロイド瘢痕となり拘縮をもたらすものまで様々で、これらが混在していることもよくあります。
また稀に昔のやけど跡が何十年も経て悪性化する瘢痕癌というものもあり、注意が必要です。
治療は、切除・縫合や植皮を行いやけど跡の範囲をなくす、または減らすことです。
「瘢痕拘縮」は、関節部や首など皮膚が引っ張られる場所にできやすく、見た目とともに可動域制限といった不都合が伴います。治療は、Z形成術やW形成術、局所皮弁術を駆使して皮膚の足りない長さを補ったり、傷の向きを変えることで今後の再発を予防したりすることで引きつれを解除します。
ただZ形成術や皮弁術など、あまり聞き慣れない手術ですが、一般的なのでしょうか?
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治療中に2院を行き来することも可能です。
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